【失敗しないために】科学的な転職先の選び方

キャリアデザイン

この記事では、転職で失敗しないための方法について、最新の研究動向を踏まえた上でわかりやすく解説していきます。

「今の環境を変えたいけれど、転職して後悔しないだろうか」「給与や待遇以外に、
どこを基準にして会社を選べばいいのか」
「転職エージェントに相談したけどいまいち悩んでいる」
「転職サイトを読む日々が続いている」

転職の場面では、「やりたいこと」「知名度」「なんとなく相性が良さそう」といった直感や主観的な印象で判断してしまいがちです。

しかし、行動経済学や産業組織心理学の研究によれば、人間が重大な決断を下す際、直感だけに頼ると認知バイアスによってのちの満足度が著しく低下することが示されています。

本稿では、査読付き論文や実験研究の知見をもとに、感情や先入観に流されず
「納得度の高いキャリア選択」を行う
ための方法を解説していきます。

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「好きなこと」を仕事にすべきでない?

「好きなことを仕事にすべき」という通説がありますが本当なのでしょうか。

ペンシルベニア大学(現イェール大学)のエイミー・ウジェスニエフスキー教授らの研究(Journal of Research in Personality, 1997)では、清掃員や事務職員など多様な職種を調査しました。

その結果、仕事を「天職(Calling)」と感じているか否かは、

職種そのものよりも「その仕事に従事した年数」や
「業務への関わり方」に強く相関する

ことが示されました。

最初から情熱がある仕事を探すのではなく、スキルを磨き裁量を広げるプロセスの中で情熱が後から育つことが実証されています。

「好きこそものの上手なれ」と言いますが、「上手になれば好きになる」もまた事実なのではないでしょうか。

実践例
・自分の得意なこと・苦手なことを整理してみる
・この時点では、「やりたくないこと」はあまり考えない

フォーカシング・イリュージョン:「年収〇〇万円上昇」に気をつける

フォーカシング・イリュージョン(焦点化幻想)とは、特定の要素に過度に注目し、それが人生や幸福度に与える影響を実際以上に大きく見積もってしまう認知バイアスです。

ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンとデイヴィッド・シュカーデによる研究(Psychological Science, 1998)で提唱された概念で、

人間は

「特定の顕著な要素(例:年収が100万円上がる、気候が良い)」
に意識を集中させると、
それが人生全体の幸福度を劇的に向上させると過大評価する傾向

があります。

実際には、年収増によって得られる満足度は短期間で減少してしまい、日常の長い通勤時間や職場の対人ストレスといった

「目立たないことのほうが幸福度を大きく下げること」


になります。

実践例
・業界や会社を見るときは、できるだけネガティブな要素を事前に意識的に情報収集しておく

選択肢を多くも持つべき

選択肢をもちすぎると結局迷ってしまうのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、「情熱」や「やりたいこと」などに選択肢を狭めすぎてしまうと失敗してしまうことも多いようです。

意思決定研究の権威であるポール・C・ナット教授の研究(Academy of Management Executive, 1999)では、組織における300件以上の意思決定を追跡調査しました。

その結果、

「A社に行くか、残るか」といった二者択一型(Narrow framing)の決定は失敗率が50%を超えるのに対し、最初から3つ以上の選択肢を比較検討した場合は失敗率が約3分の1にまで低下する

ことが明らかになっています。

実践例
・「転職するか否か」ではなく、幅広く自分の興味・関心のある業界や会社、職種、仕事内容を相対的に考えてみる。
・人生は有限なので、幅広く選択肢を取ることを意識する。

結局どうすれば?:「職場環境の7要素」から検討する

ハックマン&オールダム(Hackman & Oldham, 1976)の「職務特性モデル」や、デシ&ライアン(Deci & Ryan, 2000)の「自己決定理論」をはじめとする産業心理学のメタ分析から、職場環境を決定する要素は、下記の7つに集約されます。

下記をもとに、自分が何を重視しているか、考えてみるとよいでしょう。

①自律性:業務の進め方、ペース配分、手段を自分自身で決定できる自由度があるか
➁明確さ:求められている成果や評価基準、役割の境界が曖昧になっていないか
③有能感・成長実感:自身の得意分野を活かせ、スキル向上のフィードバックが得られるか
④関係性・心理的安全性:批判や報復を恐れずに意見を表明でき、互いに助け合えるチームか
⑤社会的一貫性:自分の仕事が他者や社会に役立っている実感を直接得られるか
⑥適度な要求度と統制:業務量に対して、裁量が釣り合っているか
⑦生活との調和:通勤時間(※片道45分を超えると幸福度が大きく低下)や睡眠が確保できるか

次に取るべき行動:プロに無料相談して自分の市場価値をはかる

次に取るべき行動は、ここで見てきたように、とにかく幅広い選択肢をもつことです。

その中で、自分が大切にし、譲れない項目を上記から絞っていってください。

それと並行して、プロのキャリアコンサルタントに無料で相談し、自分が転職市場でも通用する「強み」「スキル」「アピールポイント」を発見していくべきです。

そうすることで、「自分の市場価値」がわかり、すぐに転職をしない場合でも、通常の業務に対する認識や日々のスキルアップのための学習計画を立てることができます。

少し面倒なのはわかりますが、「できるだけ多くの人に相談してみて、平均的な理解を得る」ことが肝要です。

一人のコンサルタントの提案や能力で自身の転職(やそれにまつわるビジョン)を任せきるには心元ないからです。

「今すぐに転職」でなくてもとりあえず相談予約してしまい早いうちから方針を立てておくが大切です。

参考文献


Dawes, R. M. (1979). The robust beauty of improper linear models in decision making. American Psychologist, 34(7), 571-582.

Deci, E. L., & Ryan, R. M. (2000). The “what” and “why” of goal pursuits: Human needs and the self-determination of behavior. Psychological Inquiry, 11(4), 227-268.

Hackman, J. R., & Oldham, G. R. (1976). Motivation through the design of work: Test of a theory. Organizational Behavior and Human Performance, 16(2), 250-279.

Klein, G. (2007). Performing a project premortem. Harvard Business Review, 85(9), 18-19.

Nutt, P. C. (1999). Surprising but true: Half the decisions in organizations fail. Academy of Management Executive, 13(4), 75-90.

Schkade, D. A., & Kahneman, D. (1998). Does living in California make people happy? A focusing illusion in judgments of life satisfaction. Psychological Science, 9(5), 340-346.

Wrzesniewski, A., McCauley, C., Rozin, P., & Schwartz, B. (1997). Jobs, careers, and callings: People’s relations to their work. Journal of Research in Personality, 31(1), 21-33.

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