やってはいけない大人の勉強法5選

【学習科学】

この記事では、限られた時間の中で資格取得やスキルアップを目指す社会人にとって「やってはいけない勉強法」を解説します。

最大の敵は「勉強時間の不足」ではなく、「非効率な勉強法による時間の浪費」です。

学生時代と同じ感覚でテキストを開き、マーカーを引き、ノートをまとめているビジネスパーソンは少なくありません。

しかし、認知心理学や脳科学の知見に照らし合わせると、多くの人が無意識に行っている定番の勉強法の多くは、労力の割にほとんど記憶に残らない「やってはいけない学習」であることが明らかになっています。

平日に確保できる貴重な1時間を無駄にせず、最短で成果を出すために捨てるべき5つの勉強法と、その代替となる認知科学的なアプローチを解説します。

まずは結論から。

・テキストを何度も丁寧に再読すること
・重要な箇所にマーカーやハイライトを引くこと
・綺麗にノートをまとめること
・1つの科目をまとまった時間ずっと勉強すること(集中学習)
・休日にまとめて勉強時間を確保しようとすること

これらが「やってはいけない」理由を解説した後に、「やると効率的な勉強法」を紹介します!

×テキストを何度も丁寧に再読する

最初から最後までじっくり読み返す行為は、多くの学習者が最も安心感を覚える手法ですが、認知心理学の研究では極めて学習効果が低いことが実証されています。

テキストを目で追っていると、脳は「すでに見たことがある情報」に対して処理をスムーズに行えるようになり、これを「流暢性の錯覚」と呼びます。

実際には脳の長期記憶に定着していないにもかかわらず、スラスラ読めることで「自分は内容を理解し、覚えた」と錯覚してしまう現象です。

思い出す練習をする

この錯覚に時間を使うのをやめ、代替として取り入れるべきなのが「アクティブリコール(想起練習)」です。

パデュー大学のジェフリー・カーピックらの研究でも示されている通り、人間の脳は情報を頭に入れる時ではなく、「頭から引っ張り出そうと負荷をかけた時」に最も強くシナプスを結合させ、記憶を定着させます。

テキストを1ページ読んだらすぐに本を閉じ、「いま何が書いてあったか」を白紙に書き出す、あるいは頭の中で要約を再現する。

この「思い出す負荷」をかけることこそが、インプット時間を半分に削りながら記憶の歩留まりを最大化する鍵になります。

「覚えることは思い出すこと」です。
漫然と読むのではなく、頭で整理しながら読むとよいということです。

重要な箇所にマーカーやハイライトを引くこと

蛍光ペンで重要単語を色分けする作業は、勉強している感覚を強く得られる一方で、脳にとっては単なる受動的な手の運動に過ぎません。

ケント州立大学のジョン・ダンロスキー教授らが過去数百件の学習法研究を精査した包括的なメタ分析においても、テキストのハイライトやアンダーライン引きは「学習効果が極めて低い(low utility)」と評価されています。

マーカーを引く行為は、文脈全体から本質を抽出する深い思考を奪い、線が引かれた単語の表面的な認識にとどまる傾向を強めます。

自分に教える練習をする

マーカーを手放し、代わりに実践すべき手法は「精緻化質問(セルフティーチング)」です。

「なぜこの公式や理論が成り立つのか?」「これは実務のどの場面で具体的に使われているのか?」と自問自答を重ね、すでに持っている事前知識と新しく学ぶ知識を論理的に結びつけます。

他人に説明するように自分の言葉で因果関係を言語化するプロセスを踏むことで、断片的な知識が強固な体系として学習することができるのです。

「思い出すこと」の次は、「人に教えること」を練習します。


人に教える際には体系立てて説明する必要があるため、自分に教える練習をすることで結果的に体系立てて学習できる、ということです。

綺麗にノートをまとめること

テキストの要点を綺麗にノートに書き写す作業は、最も時間を浪費する勉強法の一つです。

文字を整えて書き写す作業は、本質的な「理解」や「暗記」がおろそかになります。

ノート作りは「理解した結果のアウトプット」ではなく、「理解するための作業」と勘違いされがちですが、完成した美しいノートは復習に使われる頻度も低く、投資した時間に対するリターンが極めて小さくなります。

ノートの整理より実践・演習

ノートを自作する時間をゼロにし、その時間をすべて「過去問や問題集の実践」に充てるのが大人の合理的なアプローチです。

知識をインプットした直後、まだ記憶が曖昧な段階であっても、すぐに問題演習に飛び込みます。

「解くために何が足りないか」を逆算してテキストを参照する方が、知識の用途が明確になり、圧倒的なスピードで実戦力が養われます。

テキストは「プロが知識を整理したもの」です。
わざわざ我々素人が「テキストの劣化版」を作る必要はないでしょう。

整理するにしても「どうしてもわからない数か所を重点的にまとめる」方がよっぽど効果的です。

1つの科目をまとまった時間ずっと勉強すること(集中学習)

週末にまとめて3時間、同じ科目のテキストをひたすら解き続けるようなやり方は、脳の処理能力を急速に低下させます。

同一の刺激が続くと、脳の神経細胞は慣れによって情報処理の感度を落とし、注意力が散漫になります。これを打破するのが「インターリービング(交互配置学習)」と「分散学習」です。

認知心理学者ネイト・コーネルらの研究などで示されている通り、1つの分野を集中的に学ぶよりも、関連する複数の異なるトピックを短いスパンで切り替えながら、数日〜数週間の間隔を空けて反復する方が、長期的には遥かに高い記憶定着率と応用力を生み出します。

たとえば平日に簿記を学ぶ場合、平日の30分で商業簿記の計算を解き、翌日は工業簿記の理論を扱い、週末に再び最初の計算の復習に戻る、といったようにテーマを分散させて交互に配置します。

脳に「知識の引き出しを瞬時に切り替える負荷」をかけることが重要なのです。

同一の科目を学習すると勝手に「整理されている気がしてしまう」ようです。
同じ資格試験の勉強でも、「性質が異なるジャンル」で区別して勉強するとよいでしょう。

休日にまとめて勉強時間を確保しようとすること

平日は残業で忙しいからと平日の勉強をゼロにし、土日に6時間机に向かおうとするスケジュール設計は、習慣化の観点からも記憶定着の観点からも最も失敗しやすいパターンです。

エビングハウスの忘却曲線が示す通り、人間はインプットした情報を24時間以内に急速に忘却します。5日間の空白を空けて週末にテキストを開いたとき、前週に学んだ内容を思い出すためだけに多くの時間を消費し、実質的な前進がほとんど得られません。

大人の学習における鉄則は、「休日の長時間学習」ではなく「平日のコツコツ勉強」です。

1回15分のスキマ時間を1日2回、週5日積み重ねる方が、週末のまとまった3時間よりも脳科学的に記憶の定着率は遥かに高くなります。

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