この記事では、「断捨離」の不思議な効果について、わかりやすく解説します。最新の研究論文をもとに、科学的根拠をもって解説しているつもりですので(スピリチュアルではありません!)、安心して読んでみてください。
また、「断捨離」のやり方、どのくらい捨てていいかがわからないという方に対するヒントも解説しています。
早速ですが、「断捨離」の効果は、研究によれば、下記のようになるようです。
・視覚的ノイズが減るため、集中力が上がる
・ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が抑制される
・決定疲れ(ディシジョン・ファティーグ)が減少する
・物質主義から脱却でき、長期的な幸福度が向上する
なんとも良いことしかなさそうです。
疑い深い筆者は「ほんまかいな」と思っていたのですが、少しずつ調べていくと、様々な心理学的な効果があることがわかってきていることを知ったのです。
私も実際に、500冊ほどあった本をブックオフで少しずつ売却していっており、今半分以下になりました(服も大量に捨て、半袖のTシャツは3着。マジでこれで足りる)。
ですが、本が減れば減るほど、「もっと売れる(いらない)本があるな」ということに気づいてきました。
人がどれだけ「捨てる」ということに心理的負荷がかかるかを思い知らされることになったのです。
捨てることに慣れてしまえば、「自分にとってのモノの本当の価値」をやっと測ることができるようになります。
では、なぜそうなるのかやその効果を説明し、それに付随した「断捨離のやり方」について解説していきます。
この記事はPRを含みます。
視覚的ノイズが減るため、集中力が上がる
散らかったデスクや物であふれた部屋にいると、作業が手につかなかったり、すぐに疲れてしまったりした経験はないでしょうか。
これは脳の情報処理スペースである「ワーキングメモリ」が、周囲の物にリソースを奪われているということです。
プリンストン大学神経科学研究所のMcMains氏とBeck氏の研究(2011年)では、人間の視覚野(脳の視覚を司る部分です)は「視野に入る複数の刺激」に対して常に反応し、限られた処理能力を奪い合ってしまうことが実証されています。
しかし、「散らかっている部屋の方が捗るような気がする」という人もいるかもしれません。これもあながち間違っていませんが、脳が処理する「対象」が違うようです。
ミネソタ大学のキャスリーン・ヴォース(Kathleen Vohs)教授らの有名な研究(2013年)では、被験者を「整然とした部屋」と「散らかった部屋」に分けて認知課題を行わせたところ、次のことがわかりました。
整然とした部屋: 規範意識、几帳面さ、「論理的・収束的思考」が高まる(ミスが許されない事務作業、計算、校正向き)。
散らかった部屋: 既存のルールや枠組みから外れる「発散的思考」が活性化し、斬新なアイデアや独創的な発想を生み出しやすくなる。
この結果から、小説や漫才の設定や展開を考えるなどではない限り、つまり多くの集中を要するタスクを処理する場合は、部屋が散らかっていると集中できないということが、認知心理学的にも明らかになっているのです。
当たり前のことだと思うかもしれませんが、「当たり前のことが当たり前に確認できた」ことは学問的には素晴らしいことです。学問の世界では、「当たり前のことが当たり前じゃなかった」ことも多々あるからです。
デスク周りの断捨離の方法
これだけで記事が書けてしまいますが、さしあたり、すぐにできる方法を一点だけお伝えします。
それは、まず、「余っている充電ケーブルを捨てよ」です。
Type-C、Type-A、古いパソコンなら専用ケーブルなど、デスク周りは散らかる要素が満載です。
「付属していたケーブルを捨てるのがもったいない」「いつケーブルがだめになって予備が必要になるかわからない」などと言って、収納ボックスに大量のケーブルがある人は多いはずです(私もそうでした)。
しかし、すぐに使わないもののせいで、自分の部屋が散らかる要因になり、集中力がそがれる方が「もったいない」です。
「一つの機器に一つの充電ケーブル」を割り当て(ケーブルごとに出力できる電力が違うので注意)、もし不安なら全体の予備として一本残して「すべて捨てる」ようにしましょう。
ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が抑制される
本来、自宅は心身の疲労を回復させるための「安全基地」であるべき場所です。
しかし、視界に不要な物が溢れていると、脳はそれらを無意識に「未完了のタスク」として認識してしまいます。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のCELFが実施した追跡調査(Saxbe & Repetti, 2010)では、住環境と身体的ストレスの相関について顕著な結果が得られました。
自宅を「散らかっている」「物であふれている」と捉えている人
→ 一日を通してストレスホルモンの分泌パターンが乱れ、夜間になっても数値が下がりにくい慢性的なストレス状態に陥る。
自宅を「整っている」「休息の場」と捉えている人
→ コルチゾール値が夜にかけて低下し、身体が本来のリラックス状態へ移行する。
家をすっきり片付けることは、自律神経を整えて休息の質を高めるために必要なアプローチといえます。
リビングの断捨離の方法
リビングは人によって様々なものがあると思います。それによってやり方は変わってきます。
ですが、下記の二点だけ注意すると、断捨離をする基準ができます。
・床・机の上にモノを置かない
・「一つの目的に一つの道具」を徹底する
リビングにソファーがあるのはいいでしょう。しかし、ヨギボーやクッションの類いが座布団などが複数置いてありませんか?
「一つの目的に一つの道具」。インテリアとしてクッションが一つか二つあるのはいいとして、リビングでくつろぐという目的に対して、ソファーという道具が一つでいいはずです。
床や机の上にはモノを置かないことも徹底しましょう。
決定疲れ(ディシジョン・ファティーグ)が減少する
スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグが毎日同じ服を着ていた話は有名ですが、これにも確かな認知心理学的根拠が存在します。
人間は1日に平均2万回以上、最大で約3万5,000回もの意思決定を行っているとされています。
心理学者ロイ・バウマイスター氏らが提唱した「自我消耗(Ego Depletion)」理論(1998年)の通り、人間が一日に下せる質の高い判断の回数には上限があります。
・今日何を着るか
・どの靴を履くか
・この書類をどこに片付けるか
こうした些細な選択であっても、回数を重ねるごとに前頭前野のエネルギーは消費され、意志力や集中力は確実に消耗していきます。
日常の持ち物を厳選し、選択肢をあらかじめ絞り込んでおくことは、仕事や人生の重要事項に回すための「脳の体力」を温存する最も合理的な戦略なのです。
服の断捨離の方法
服を捨てる基準はかなり難しいですよね。
「思い出の旅行のときに着た服」「痩せたら着たい服」「着ていないけど捨てるにはもったいない服」などたくさんあり、どれを捨てるべきかわからなくなります。
しかし、断捨離は手段です。
「モノ(服)がいっぱいあってイライラするから整理したい」という気持ちから、「モノを整理し、把握し、管理できるようにする」という目的が明確に設定できますよね(人によっては微妙に目的がばらばらでしょう)。
この目的からして、いわば「自分が管理できる量にまで減らす」という手段が出てくるわけです。
そこで、筆者が勧めているのは、「1シーズン・最大4着(パターン)」です。
例えば、夏において、Tシャツ1枚につき合わせるボトムスが1枚と限定します。秋なら、上に羽織るものがあるかもしれませんが、それも組み合わせを限定して、1パターンだけにしか使わないというルールをつくると、自然と服が増えていくということがなくなります。
服を買うときに、絶対に合わせるものを決めなくてはならないからです。
物質主義から脱却でき、長期的な幸福度が向上する
「新しい物を買えば満たされる」という消費の際限のないループは、心理学的に幸福度を損なうリスクを孕んでいます。
心理学者ティム・カッサー氏らによるメタ分析研究(Dittmar et al., 2014)では、物質的な所有や富の獲得を強く意識する人ほど、不安や抑うつ感が高く、人生の満足度や自己肯定感が低くなりやすい傾向が一貫して報告されています。
モノを得ることによる快感は、「ヘドニック・トレッドミル(快楽順応)」によって短期間で薄れてしまいます。いわゆる「慣れ」です。
その結果、さらなる刺激を求めて終わりのない他者との比較と消費に追われてしまうのです。
モノへの過剰な執着を手放し、経験や人間関係、自己成長へとリソース(時間やお金)を再配分すること。
所有ではなく内面の充実に軸足を移すことこそが、揺らぎにくい幸福感を築く土台になります。
おわりに:自分にとっての「一軍」だけを残す
現代はスマートフォンを開けば魅力的な広告が飛び込み、絶えず消費を促される環境にあります。
買い物をすること自体は決して悪いことではありません。大切なのは、自分自身の軸(つまり、いつ・どこで・何を買うかという自分の基準)で必要なものを吟味し、選別する姿勢です。
まずは身の回りの持ち物を見直し、「本当に大切にしたい一軍」だけを残して余分な物を手放してみてはいかがでしょうか。
視界がクリアになるにつれて、思考や行動の軽やかさを実感できるはずです。
参考文献
- Baumeister, R. F., Bratslavsky, E., Muraven, M., & Tice, D. M. (1998). Ego depletion: Is the active self a limited resource? Journal of Personality and Social Psychology, 74(5), 1252-1265.
- Dittmar, H., Bond, R., Hurst, M., & Kasser, T. (2014). The relationship between materialism and personal well-being: A meta-analysis. Journal of Personality and Social Psychology, 107(5), 879-924.
- McMains, S., & Beck, P. B. (2011). Interactions of top-down and bottom-up mechanisms in human visual cortex. The Journal of Neuroscience, 31(2), 587-597.
- Saxbe, D. E., & Repetti, R. (2010). No place like home: Home tours correlate with daily patterns of stress hormone levels. Personality and Social Psychology Bulletin, 36(1), 71-81.

